BPQC

01 NOV 2017

ものづくりの現場から

「良質適価、かつ高感度」をコンセプトに、上質なファッションを発信し続けるBPQC。
そのコンセプトと同じ視点で、生地開発に励む第一織物株式会社。 両者は2年前からともに超高密度織物を使ったアウター作りを行っている。
BPQCのアイテムが生まれるものづくりの現場を見に、福井県にある工場を訪ねた。

PHOTOGRAPHS:AKIKO BABA
TEXT:MARIKO URAMOTO

唯一無二の超高密度織物を使った、
リバーシブルダウンコート。

 多雨多湿の気候を生かし、古くから日本の繊維製造を支えてきた北陸地方。とりわけ、ポリエステルやナイロンといった合繊長繊維織物の一大産地として知られている。ここに、革新的な技術開発によって、ユニークな新素材を発表し続ける一つの企業がある。福井県坂井市に会社を構える第一織物だ。「約20年前にファッション衣料の世界で勝負すると決めた時、我々は合繊長繊維の高密度織物に特化しようと方針を固めたんです」と話すのは代表取締役の吉岡隆治さんだ。社員数は約60人と規模は大きくないものの、独自で開発した超高密度織物は高品質、高機能を両立した新素材として注目を集め、世界中のビッグメゾンからオーダーが絶えない。

 第一織物が誇る超高密度繊維とは、経糸と緯糸が絡み合う密着度が100%以上の織物のことを指す。経糸と緯糸の隙間がなく密着している状態を100%とすると、それを超えたものが超高密度だ。糸の隙間を極限まで最小化して織り上げた生地は強度が高く、遮熱効果も兼ね備える。ただし、密度が高ければ高いほどいいというわけではない。高い圧力をかければ糸は弱り、生地の風合いや着心地の良さは損なわれる。他にはないファッションテキスタイルを作るために、第一織物は密度の高さだけを追求するのではなく、上質であることにも徹底的にこだわった。「質のいい織物を作るためには、高い圧力ではなく、低い張力で高密度の生地を織る技術が必要です。すると経糸と緯糸が均一に屈曲する。そうやって生まれた生地は仕立て映えして、型崩れしにくい。ファッションテキスタイルには欠かせないポイントです。私たちは“素肌美人に薄化粧”とたとえますが、どんなに素晴らしい染料や加工を施したって、生地そのものが美しくないとその良さが生かせない。だから、生地の開発には何度も試作を繰り返します」。自分たちが理想とする生地を作るには数年かかるのが当たり前だとも。「生地が完成しても、すぐに売れたことは一度もない。3年後に採用されたらいい方です。まだ日の目を見てない生地もありますよ。でも社員には、すぐに売れなくてもいいと伝えています。生地の完成度が高ければ、いつかきっと理解者が現れる。でも中途半端なもの作っていたら、それまで培ってきた評価すら地に堕ちる。自分たちが納得できるものを作りたい。それだけなんです」

 工場の内部には機械がずらりと並んでいるが、ボタン一つで完結するものではない。高品質で高機能の生地は機械が作るものではないと語る吉岡さんは、こう続ける。「どんなに素晴らしい技術を搭載した機械を導入しても、重要なのは人間の感性です。特にファッションテキスタイルは見た目や風合い、着心地など繊細な感性が宿る世界。それは機械には判断できません」。全自動の機械に任せるのではなく、常に人が介在し、目を配り、糸の感触を確かめ、細かな調整を行っていく。糸一本の違いで、生地の仕上がりはがらりと変わる。「超高密度織物の開発には“ハイテク・高機能”ではなく、“ローテク・高感性”がなにより大事」と吉岡さん。だから、スタッフが働きやすい環境作りもこだわる。織物工場は水をたくさん使うため、カビが生えやすいと言われているが、第一織物の工場内は空調と衛生管理を徹底しているため、20年経った今でもカビ一つ生えていない。機械はメンテナンスのために年間100日は稼働を止める。大量生産が目的ではなく、質の高い生地を提供し続けるためだ。唯一無二の超高密度織物は、徹底した環境整備とそこに働く人たちの感性、新しい可能性に向けて歩む姿勢から生まれている。

 こうした第一織物のものづくりに共感し、BPQCでは2年前から一緒にアウターの開発を行っている。今季リリースするリバーシブルダウンコートについて、BPQCバイヤーの真下郁未さんはいう。「それまでのダウンジャケットは、カジュアルすぎる印象がありました。でも、厳しい冬に防寒性、保温性は欠かせない。それなら、エレガントに見えるよう、ダウンステッチをなくしたプレーンな面とカジュアルな面の二つの表情を持ったアウターを作ろうと企画がスタートしました」。第一織物が開発した光沢ツイル素材は、肌当たりが柔らかく、張り、コシ、ふくらみをバランスよく複合した高密度素材。独特の陰影感のおかげで、どんなスタイルもシックにまとまる。まさに理想的な素材だった。見た目以上に軽いのも特長で、デザインは動きやすさとスタイルアップを重視。体のラインがきれいに見えるようさりげないカッティングをほどこしている。コイル状に加工した糸のおかげでほどよくストレッチが効き、体の動きに合わせたしなやかさもある。「生地の特長を最大限に生かした、理想的なアウターが生まれたと思っています」

 生地の専門家とバイヤーが互いの意見を出し合い、より良いものを作るために何度も打ち合わせを行い、試作を重ねる。時間はかかるが、最大限クオリティを追求することで、真下さんも本当に作りたかったアイテムが生まれると話す。「第一織物はBPQCのコンセプトを実現してくれる心強いパートナー。私たちが理想とするファッションに対して同じ視点で取り組んでくれます。私はここを訪れるたび、吉岡さんと話すたびに、生地への熱い思いを受け取ります。その思いをきちんとお客様に届けること、そして、お客様の声を次のファッションに生かすことが私たちの使命です」と真下さん。『良質適価、かつ高感度』という思いを共有する両者のものづくりへの挑戦は、これからも続いていく。

第一織物株式会社

昭和23年創業。ファッション衣料を中心に、スポーツ衣料や産業資材など上質な織物を開発・製造する。独自に開発した超高密度織物は世界各国のトップデザイナーに高い評価を得ている。
掲載アイテム
リバーシブル ショートダウンコート
リバーシブル ロングダウンコート

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